後手番。先手の37角が91角成と香を補充し、39香を見せたところ。
ここでの35玉は、早逃げの中でも理解しやすい部類だと思う。
放置するのは39香で玉が狭い。
玉が36のまま受けても当たりが強い。
よって攻め駒から遠ざかる。
35玉とすれば39香に36歩で、玉のいた地点に駒を打てる。緩衝地点を作る意図。
35玉、39香、36歩、47銀と進んで図2。
75飛、68玉、44玉(図3)。75飛を利かして55馬を緩和する。さらに44玉と引き、守備駒の内側に入った。44玉も早逃げとしては難しくないが、75飛との組み合わせによってより効果的になっているのが面白い。
44玉には別の意図もある。35玉のままだと先手は36香と36銀の2択のよりよいほうを選べるが、44玉と引くと36香には35歩があるため、36銀に限定することができる。
図3から36銀、31香と取ったばかりの香を据えて図4。
44玉と先に指し、36香なら35歩、36銀なら31香と応手を変えていることに注意しよう。後出しジャンケンの原理である。
図4は先手が決めにいける局面では全然なく、混戦模様。なお以上の手順は双方ソフトの手であり、お互いほぼ最善である。
35玉
・複数の攻め駒からの相対位置を遠くする
・線駒の隣接王手を緩和する
・受けにくい狭い空間を脱出する
・玉のいた地点に駒を打てるようにする
・さらなる早逃げを可能にする
44玉
・線駒の隣接王手を緩和する
・王手を避け、駒を打つ手番を得る
・守備駒の利きの内側に入る
・将来必ず逃げることになる地点に先に行き、相手の手に応じて応手を変える