図1は先手番。次に27歩がひどい。36馬もあって収拾困難に見える。先手どう対処していくか。
放置して27歩とされると39玉は受けになっていない。よって先に39玉と逃げる。なお、39玉に対して36馬が気になるが、31馬と当てて42飛、34歩でいい勝負。
図1から39玉、27歩、49玉、28歩成、48金、36馬(図2)。
図2で47桂が絶対手。駒の連結を高めて手を稼ぐ。次いで37歩と垂らして図3。
ここが重要なところで、39歩と受けるのは悪手。同と、同玉と玉を引き戻されつつ、35馬、同桂、26飛となって、渋滞解消のお手伝いになる。十分な攻撃力に対しては手番を与えないこと、相手にしないことが重要。
というわけで図3からは59玉が正しい。38歩成、58金右(図4)。
図4では37と、55桂、38と寄(図5)と進んだが、37とが緩手で、代えて46銀、同銀、26飛といった若干指しにくい手段が必要だった。本譜は55桂が63地点をにらんで絶好。
図5ではすぐに64歩と行くか、69玉、58と寄の交換を入れてから64歩(図6)と行くかは難しいところで、ソフトも微差の評価である。人間的には先に69玉のほうが、守備駒を確実に使えて安心感が高い気がする。どちらの変化も激戦。
手順を最初から振り返る。
39玉、27歩、49玉、28歩成、48金、36馬、
47桂、37歩、59玉、38歩成、58金右、37と、
55桂、38と寄、69玉、58と寄、64歩。
4度の早逃げはどれも難しい手ではないが、手順全体として見たときに洗練されていると感じる。図1と図6の景色の違いに驚く。
39玉
・受けにくい狭い空間を脱出する
・複数の攻め駒から遠ざかる
・縦の攻めを横の攻めにさせて攻撃効率を下げる
・さらに早逃げする選択肢を作る
49玉
・王手を避け、受ける手番を得る
・複数の攻め駒から遠ざかる
・守備駒の利きの内側に入る
59玉
・王手で抜かれる手や両取りの筋を消す
・複数の攻め駒から遠ざかる
・守備駒の利きの内側に入る
・さらに早逃げする選択肢を作る
69玉
・複数の攻め駒から遠ざかる
・入城して王手がかかりにくくする
・さらに早逃げする選択肢を作る