自玉1手スキvs敵玉2手スキでの方針分類

方針分類

速度計算の結果、相対速度で勝っているときは、通常敵玉を一手縮めることから考えます。3手スキであれば2手スキに、2手スキであれば詰めろに進行させるという意味です。

逆に相対速度で負けている場合は単純に1手ずつ縮め合うと負けますので、何らかの工夫が必要になります。

相対速度で負けているケースのうちで最も基本となる、自玉詰めろで敵玉が2手スキのケースについて、どのような方針が必要かを考えてみましょう。

以下では、この「自玉詰めろで敵玉が2手スキ」という状態を、数字の部分だけ取り出して1vs2と表記します。

方針は以下の5パターンに分けられます。
(A~Eだけではなく、それらの組み合わせも方針に含まれます)

A.自玉に詰めろがかからない形にする
B.詰めろ逃れの詰めろ
C.より条件のよい詰めろに誘導する
D.敵玉を遅くする代わりに自玉も遅くする
E.トン死を狙って王手ラッシュ

先程の表記を用いて書くと以下になります。

A:1vs2→3vs2。速度逆転を起こす
B:1vs2→2vs1。速度逆転を起こす
C:1vs2→2vs2。相手の手番になるので速度逆転を起こさない。通常相手は再度1vs2にし、自分は改めてA~Eを選択する
D:1vs2→2vs3など。速度逆転を起こさない
E:1vs2を1vs1だとみなす。相手がミスすれば1vs0(詰み)にでき、速度逆転を起こす

実戦での手の選択

手を選ぶ場合、まずAとBを目指します。
しかしAやBが今すぐには存在しないこともあります。従って将来のAやBを実現させるために、Cの事前準備を必要とすることが多々あります。

具体的には、詰めろを受けながら
・駒を溜め、
・質駒を作り、
・駒を消費させ、
・攻防につながる駒を設置し、
・相手の攻め駒の効率を悪くし、
・・・といった事前作業を繰り返し、最終的にAやBにつなげることを目指します。

Cを行うときに重要なのは、詰めろを受けて2手スキの状態で手を渡し、再度詰めろを継続されたときに、継続された詰めろが元の詰めろの状態より(何らかの意味で)「改善」していなければならないことです。

「改善」しないCをずっと続ける状態がいわゆる「一手一手の寄せ」です。Cを続けても一手一手にされることが見込まれる場合は、強引にAやBにするか、それがダメならDで辛抱、最終手段としてE、つまり最もトン死可能性が高い盤況を選んで王手ラッシュに踏み切ることになります。

Dは当面の自玉の詰めろを解消し、勝負を先延ばしにする考え方で、以下のようなケースが挙げられます。
・駒損してでも王手で相手の要駒を抜く
・攻撃力を減らしてでも自陣に駒を投入する
・反撃を一旦放棄して入玉を目指す

方針同士の優劣選択

AやBが常にDやEが手段として優るわけではありません。

Dにおいて、自陣に駒を投入することによって相手の攻めが遅くなる効果が自分の攻めが遅くなる効果を上回る場合は、Dが好手になりえます。

逆にBで詰めろ逃れの詰めろをかけたとしても、敵玉への詰めろが薄く、相手に再度詰めろ逃れの詰めろで返されて負けることもあり、詰めろ逃れの詰めろをかけない方がよかったというケースも存在します。

上記でわかるように詰めろ逃れの詰めろ=勝ち、ではありません。詰めろ逃れの詰めろとは1vs2を2vs1にする行為であり、相手にとって「敵玉が2手スキ、自玉詰めろ」の状況になっただけです。相対速度が一時的に逆転しただけであり、相手にとっての局面の要請条件が高くなったことは事実ですが、勝ちかどうかは別です。

詰めろ逃れの詰めろをかけたときに、相手に有効なA~Eがないことを確認できて初めて勝ちになったと言えます。

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