Case 4

47歩と叩かれたところ。
58歩成を嫌って57金は、49銀で収拾困難。38金と58歩が見合い。47歩に49金と引くのも58歩成~49銀で大差なし。さてどうする?

図1

じっと38金!が速度計算に基づく一手。仮に58歩成~59と~49銀を想定すると、49銀は詰めろではなく、従って58歩成は4手スキ。

ただし49銀を打たれるまでに先手がもっと駒を渡していると、49銀は詰めろになりそう。つまり駒が増えていると58歩成は潜在的に3手スキの可能性がある。

この状態を、このブログでは「58歩成は4(駒3)」と表記する。

58歩成(図2)の局面では、後手玉に3手スキ以上で迫ることを考えることになる。その際、詰めろまでに駒を多く渡さない手順が望ましい。

といっても、82歩、62玉、81歩成では次の82とが2手スキにならないのでどうするか。

図2

54桂!の単純詰めろが意外に受けにくい。
51金ならそこで82歩で、81歩成に61玉と寄れない(王手飛車)。54桂に52金は41角~23角成で続く。

よって勢い54同金、同歩、49銀(図3)と進む。後手は角を取る余裕はない。自玉はどれぐらい危険だろうか?

図3

質駒を作って打ちにくいが、再度単純詰めろの53金!が好手。

自玉の状況は、金なら渡しても詰まないが、角を渡すと危険。具体的には、53金に代えて53角は、同銀、同歩成、38銀成、同玉以下、49角や26桂が相当危ない。(実際は不詰)

まとめると、自玉はほぼ2手スキでナナメ駒を渡すと危ない形。先程の表記を応用すると保守的に見て2(ナナメ駒1)となる。

実戦での速度計算では素早く概算することが必要で、自玉の場合「保守的に見て」計算するやり方は実用的だと思う。

戻って、58歩成の時点では59角を取る前提の計算だったために4(駒3)と見積もった。これ自体は間違っていなかった。

しかし、角を取らずにスピードアップする本譜は、58歩成時点で3(駒2)であり、この順も考える必要があったことがわかる。

なお、4(駒3)という見積もりにおいて、3手スキになるために必要な駒の量は小駒一枚ぐらい。一方49銀時点の2(駒1)で、詰めろに必要な駒の量は角かそれ以上になる。スピードアップを図った分必要な駒の量が増えていることがわかる。

再掲図3

本譜に戻る。
図3以下、53金、82桂(91金は63歩~64香で明快)、同桂成、同玉、94桂、92玉、93歩、同桂、95香、85桂、96飛(図4)。

図4

96飛が詰めろ継続になっており優勢維持。43角や39金があるため寄せ切れる。

53金のところでは、よく考えもせずに、つい63歩と垂らすような「それっぽい」手を指してしまうことがある。

速度計算に基づいて事実を集め、局面の要請を満たす地味な正解を積み重ねることが本当に大事だと思う。

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