速度推移表の作成過程を解説します。将棋の進行を追ってみましょう。
15歩、77飛成、63香、76竜、62香成、同玉(図2)、
42金、同金、同馬、64銀、65歩(図3)、
7手目42金は2手スキ。
11手目65歩も2手スキ。
従って6手目62同玉の局面が3手スキ。
そうなると3手目63香が4手スキ、1手目15歩が5手スキだったことが分かる。
16歩、同香、17歩、同桂、65竜、82歩成、
63玉(図4)。
手順中12手目16歩は詰めろではないので、手を抜いて64歩、17歩成、同玉、16歩、28玉と進めることはできる。
しかしそこで73玉(変化図1)と上がられて面倒。自玉は17から打ち込まれる筋があって駒を渡しづらい。
変化図1の先手玉は2手スキでかつ駒が入ると詰む(=1手スキになる)形。
これを2(駒1)と記載することにする。
一般的に2(駒1)は、単なる2手スキよりも強い2手スキ。
戻って、12手目16歩は手を抜くと変化図1のように先手で2(駒1)にすることができる手だったため、16歩自体も2手スキ、よって16歩を打つ直前(10手目65歩)は先手玉3手スキであったことになる。
そうすると、先手玉はいつ初めて3手スキになったのか?正確には計測しづらいが、8手目42同金と金を入手したあたりと思われる。遡って4手目76竜が4手スキ、2手目77飛成が5手スキだったと推定できる。
本譜に戻り、図4から43馬、54銀、21馬、44桂(図5)。
44桂は36桂~28角~46角成~45竜以下の詰めろ。速度が逆転したようだが、薄い詰めろで続かない。
44桂が詰めろということは、先手玉は65竜によって5段目の利きができた時点で2手スキになっていたことがわかる。65竜は先手玉を1手縮め、かつ後手玉を1手延ばす攻防手だった。
図5から47金、36桂、同金、44桂、37歩、36桂、同歩、68竜(図6)。先手は桂を消費させて詰めろの継続を阻止。後手は2手スキ止まりながら、金を先手ではがして次に47金の詰めろや44角・65角あたりの攻防手を狙う。
71飛、73歩、85金(図7)。
ようやく先手に手番が回り、詰めろに進行。
37金、同玉、19角、28銀、65銀直(図8)。後手は非常手段発動で、瞬間的に銀を消費させて受けやすくする意図。ただし駒の犠牲が大きく、先手玉の手数も延びる。
19銀、57竜、47金、66竜、61飛成(図9)以下先手勝ち。先手玉が寄らない形になり、最後は大差となった。
以上を速度推移表としてまとめたものが以下です。符号を追加するとよりわかりやすいのですが、スマホ画面が狭いため割愛します。
手順 | 後手玉 | 先手玉 | 備考 |
1-6 | 5→4→3 | 5→4 | 先手寄せ合い志向。後手駒を溜めて追跡 |
7-11 | 3→2 | 4→3 | 先手2手スキに進行。後手金を入手し3手スキで追跡 |
12-15 | 2 | 3→2→3 | 後手追っかけ2手スキによる利かし |
16-18 | 2→3 | 3→2 | 65竜が攻防で瞬間的に速度が逆転 |
19-21 | 3→2 | 2 | 先手駒補充しつつ駒を使わせ、2手スキに進行 |
22-30 | 2 | 2→1→2 | 後手詰めろが続かず2手スキで待機。ここで先手が速度で追い抜く |
31-33 | 2→1 | 2 | 先手詰めろに進行 |
34-38 | 1→2 | 2→ 3(駒2) |
後手非常手段。後手玉も2手スキに延びたが、先手玉も3手スキに後退 |
39-43 | 2→1 | 3(駒2) →3 |
後手玉は2手スキから延びない。先手は自玉を3手スキ以上にして勝ちが確定 |
(表の読み方)
・「後手玉」「先手玉」は、それぞれが何手スキかを表す。
・「3→2」は3手スキから2手スキになったという意味。
・3(駒2)は前述の通り「3手スキだが駒が入ると2手スキ」の意味。何が入ると2手スキになるのかは、ここでは省略している。
・「追っかけ2手スキ」については別の記事で触れる。
次の記事では、
– 表作成を通して得られた気づき
– 表のとらえ方や使い方
– 作成する意味、メリット・デメリット
について述べてみます。